腎臓が悪い
「尿検査で蛋白が出ていた」「腎機能の数値が悪い」など腎臓の機能低下を指摘されると、不安を感じられる方も多いかと思います。反面、自覚症状がほとんどなく、検査の数値以外には異常を気づく機会がないことから、対応や受診を先送りにしてしまう方も少なくありません。
腎臓の異常は、早期発見と適切な管理により、腎機能の悪化を遅らせたり、場合によっては改善させたりすることができます。当クリニックでの、腎臓病の管理と治療に関して、説明させていただきます。
CKD (慢性腎臓病)
腎臓の健康に関する新しい概念として「CKD (慢性腎臓病)」が提唱され、注目されています。CKDとは、腎臓の働きが徐々に低下していく状態を指し、従来の「腎不全」という言葉よりも広い範囲の腎臓の異常を含んでいます。健診で「腎臓が悪い」と指摘された場合、多くはこのCKDの早期段階である可能性があります。
CKD (慢性腎臓病) の分類 (CKDガイドライン2012)
蛋白尿の区分 |
A1 |
A2 |
A3 |
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基礎疾患 |
糖尿病の方 |
正常 |
微量アルブミン尿 |
顕性アルブミン尿 |
|
高血圧・腎炎、多発性嚢胞腎、その他 |
正常 | 軽度蛋白尿 | 高度蛋白尿 | ||
eGFRの区分 |
G1 |
90以上 |
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G2 |
60-89 |
||||
G3a |
45-59 |
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G3b |
30-44 |
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G4 |
15-29 |
||||
G5 |
15未満 |
CKDの診断は、eGFR (推算糸球体濾過量) という腎機能の指標が3ヶ月以上にわたって60 mL/分/1.73m²未満であるか、または腎臓の障害を示す所見 (蛋白尿など) が3ヶ月以上続く場合に行われます。当クリニックでは、血液検査や尿検査の結果を詳しく分析し、あなたの腎機能の状態をCKDの観点から評価し、わかりやすく説明いたします。
CKDの定義・分類詳細は、上に示した表 (CKDガイドライン2012より引用) をご覧下さい。
CKD管理と生活習慣
CKDの管理には、継続的なフォローアップが極めて重要です。定期的な検査と診察により、腎機能の変化を細かく追跡し、適切な対応を行います。投薬がない方には通常、3〜6ヶ月ごとの受診をお勧めしていますが、CKDのステージや進行速度に応じて頻度を調整します。また、CKDは高血圧、糖尿病、心血管疾患などと密接に関連しているため、これらの疾患の総合的な管理も行います。
CKDの進行を抑えるには、適切な生活習慣が鍵となります。当クリニックでは、減塩指導、蛋白質摂取の調整、適切な運動方法、禁煙支援など、具体的なアドバイスを提供します。必要に応じて、管理栄養士による詳細な栄養指導も行います。さらに、CKDの進行に伴って起こりやすい貧血についても、院内採血によりヘモグロビン値などを迅速に評価し、適切な管理を行います。
新しい薬・治療法
近年、腎臓病の治療薬は大きく進歩しています。特に注目されているのが、SGLT2阻害薬です。この薬は腎臓病の進行を抑制し、長期予後を改善する効果が明らかになっています。その他、ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)やACE阻害薬なども、状態に応じて使用を検討します。ただし、腎生検など、より専門的な検査や治療が必要と判断した場合は、連携している腎臓専門医のいる医療機関へ迅速に紹介いたします。紹介後も、かかりつけ医として継続的なフォローを行います。
腎臓病の管理は、長期的な視点が重要です。当クリニックでは、最新の医学的知見に基づいた治療と、きめ細かな生活指導を組み合わせ、皆様の腎臓の健康を守るサポートを行います。また、腎臓病と向き合う中で生じる不安や心配事にも寄り添い、必要に応じて心理的サポートも提供します。健診で腎機能の低下を指摘されたら、ぜひ早めにご相談ください。一緒に、あなたの腎臓の健康を守っていきましょう。
ご不明な点やご心配なことがありましたら、いつでもお気軽にお問い合わせください。皆様のご来院を心よりお待ちしております。