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脈が遅い・血圧が低い

採血検査 (当院)
採血検査の一部の項目については、
院内で即日報告が可能です。
貧血・血糖異常・炎症反応が
すぐ分かることは、
診察を進める上で大きな武器となります

脈拍数の正常範囲は60~100/分 や 50~120/分など年齢や施設によって基準値が異なりますが、それより低くて心配をされている方は多数います。血圧に関しても同様ですが、WHO (世界保健機関) の基準値である収縮期圧 100mmHg以下、拡張期圧 60mmHg以下を低血圧をいうことが多いようです。

上記のような基準値を下回って心配している方や、数値基準ではなく日常生活でのふらつき・めまい、倦怠感などに悩まされている方も多数いらっしゃるかと思います。このページでは、当院で「脈が遅い」「血圧が低い」方に対して、どのような病名を想定し、どのように診察・検査を進めていくか、説明させていただきます。

原因となる病名・疾患名

脈が遅くなったり、血圧が下がったりする原因として、下記のようなものが挙げられます。

循環器系疾患 (心臓の異常)

「洞不全症候群」といって心臓の脈拍数・リズムを決める「洞結節」の細胞が不調に陥り、脈が遅くなったり (時には逆に速くなったり) する病気があります。また「房室ブロック」では、洞結節で作り出されるリズム自体は正しいのですが、その命令がうまく左心室・右心室に伝わらず、結果的に心臓の収縮が遅くなったり時に止まったりします。

心筋梗塞や心筋症などで、心機能が低下して血圧が下がってしまうこともありますが、頻度としてはあまり高くありません。心不全や不整脈に対して使用される薬剤の一部 (β遮断薬、ジギタリス製剤など) のせいで脈が遅くなることもありますが、心不全治療のために欠かせない薬であったり、増量・減量に慎重を期す必要があることが多いです。

内分泌系疾患

ホルモンの分泌量やバランスが崩れてしまうことで、脈が遅くなったり血圧が下がることもよくみられます。代表的な疾患としては「甲状腺機能低下症」といって首にある甲状腺から出るホルモンの量が減ったり作用が弱くなることで、血圧も脈拍も低くなる疾患があります。他にも「副腎不全」という腎臓の近くからでるステロイドホルモンやカテコラミンが不足する病気や、「下垂体機能低下症」といってこれらホルモンの司令塔となる脳の一部の機能が低下してしまう病気があります。

自律神経障害

交感神経という血圧・脈拍を上げる神経と、副交感神経という血圧・脈拍を下げる神経とのバランスが狂ってしまったり、普段はバランスが取れていても急に体制や体調が変わった際の調節機能が低下したりして、血圧・脈拍コントロールに不調をきたすことがあります。「起立性低血圧」や「純粋自律神経不全症」、脳の萎縮も合併する「他系統萎縮症」などが知られています。

代謝性疾患

代謝性疾患も血圧・脈拍低下の原因となりえます。「電解質異常 (特に低カリウム血症)」 は、時に漢方薬やサプリメントによっても引き起こされるので要注意です。「低血糖」は糖尿病患者や、栄養失調・体調不良で起こりえます。

更年期障害

更年期障害も、ホルモンバランスや自律神経障害を介して、血圧・脈拍の不安定化を引き起こします。症状によっては、婦人科専門医・専門施設での精査が必要となります。

熱中症・脱水

熱中症・脱水は、脈に関してはむしろ増加させることが多いですが、血圧は低下させます。

その他

貧血やうつ病、睡眠時無呼吸症候群も脈拍・血圧低下の原因となります。

当院での診察・検査

詳細な問診:まずは患者さんの症状や背景を詳しくお聞きします。以下のような点に注目します。詳細な問診により、可能性の高い疾患を絞り込み、必要な検査の方向性を決定します。

  • 症状の発症時期と経過
  • 症状の頻度や持続時間
  • 随伴症状 (めまい、失神、倦怠感、体重変化など)
  • 日内変動の有無
  • 姿勢変換との関連
  • 服用中の薬剤
  • 既往歴(特に心疾患、内分泌疾患)
  • 家族歴
  • 生活習慣(食事、運動、睡眠など)
  • ストレス状況
  • 女性の場合は月経の状況や更年期症状の有無

身体診察

次に、以下のような身体診察を行います

  • バイタルサイン測定:血圧 (臥位・座位・立位)、脈拍、体温、呼吸数
  • 心臓の聴診:不整脈、心雑音の有無
  • 頸動脈の触診と聴診
  • 甲状腺の触診
  • 皮膚や粘膜の色調・湿潤度 (貧血や脱水の評価)
  • 下肢の浮腫の有無
  • 神経学的診察:瞳孔反射、深部腱反射など

12誘導心電図検査 & ホルター心電図検査

ホルター心電図検査の装着例 (当院)
ご覧の通り大変小型で軽く、
日常生活の妨げになりません

脈拍が低下する原因が不整脈・心臓の異常でないか調べることができます。診察時に症状がでていない方に関しても、24時間装着のホルター心電図を活用することで、不整脈の診断のみならず、血圧・脈拍が下がりやすい状況や時間帯を分析することができます。

採血検査

貧血の有無、電解質異常の有無、血糖値、ホルモンの分泌量や作用、心不全の有無など幅広く評価できます。貧血評価や血糖評価など一部の項目については、外部の研究所にださずとも院内で計測できるようにしています。

超音波検査

超音波検査で、心疾患の有無や、血管の閉塞・動脈硬化などを探ることができます。

これら検査で原因が明らかになった後は、心臓であれば抗不整脈薬を使用したりペースメーカー植込みを提案したり、内分泌系であればホルモンを補う薬を処方したり、と適切に対応させていただきます。

生活上のアドバイス

  • バランスの取れた食事と、十分な水分摂取を心がけましょう。特に夏場は脱水・熱中症に注意しましょう。
  • 急に立ち上がらないよう注意しましょう。起き上がる・立ち上がる際に余裕を持つだけで、症状が大幅に楽になることもあります。
  • 症状の記録(日時、状況、前兆など)を付けておくと診断の助けになります。
  • 失神やめまいを伴う場合は、転倒のリスクがあるため、日常生活での注意を促すこともあります。
  • 症状によっては、一時的に運転や危険を伴う作業を控えていただく必要があります。
  • 薬物治療を行う場合は、副作用や相互作用について十分に説明し、定期的なモニタリングを行います。

「脈が遅い」「血圧が低い」という症状は、様々な原因で起こり得ます。適切な評価と対応により、多くの場合は症状の改善や原因疾患の管理が可能です。検査結果や症状の変化を見ながら、当院の医師・スタッフと一緒に最適な対応を考えていきましょう。不安なことや疑問点があれば、いつでもご相談ください。

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